失語症で障害年金を請求する場合のポイント

文責:所長 弁護士・社会保険労務士 湯沢和紘

最終更新日:2024年02月01日

1 失語症の障害年金申請

 失語症については、「音声又は言語機能の障害」として、障害年金の対象となっています。

 失語症での障害年金の申請にあたって、概要やポイント等についてご説明いたします。

2 初診日

 障害年金申請全般について重要ともいえる初診日の特定についてですが、失語症の場合には比較的問題が少ない場合が多いと思われます。

 というのも、失語症は、脳の言語野の損傷による言語機能の障害ということになりますが、脳損傷といえばやはり大事であることが多いので、初めて病院にいった日のきっかけや出来事等がはっきりしていたり、ご家族等周囲の方の記憶が鮮明であったりということが多いためです。

 なお、失語症という言葉から、発声できなくなってしまう状態をイメージされる方もいらっしゃるようですが、必ずしも発声の問題のみではなく、言語の理解等、意思疎通等も含めた傷病とされていますのでご注意ください。

3 保険料納付

 前提としての保険料納付の要件を満たしていなければ、脳の損傷という比較的大きな傷病であっても、寝たきりのような重篤な障害状態であっても、残念ながら障害年金の受給は認められません。

 わかりやすいのは直近1年間の未納がないかどうかという基準で、1年以上お勤めで厚生年金を納めて来たという場合には、給与天引きなので支払い漏れ等は基本的に問題ないことが多いです。

 複数回の転職があって就職していない期間がある方、自主的な納付が求められる個人事業主の方等は、国民年金への切替忘れや支払い漏れ等がないか注意していただいた方がよいかもしれません。

 直近1年に未納があったとしても、全納付期間中1/3以上の未納がなければ納付要件は満たしていることになります。

 なお、初診日前日より前に免除となっている場合、免除期間は要件の評価としては未納扱いされません。

 また、初診日が20歳前の方の場合、まだ保険料納付義務がないためそもそも納付の要件自体がありません。

4 障害状態等等級認定

 障害年金は、大枠として、現在の状態を評価し、等級に応じた年金が支給される仕組みということができます。

 そのため、お医者様に失語症と診断された=何級の障害年金、というものではありません。

 障害年金認定基準によると、「音声又は言語機能に著しい障害を有するもの」を2級、「言語の機能に相当程度の障害を残すもの」を3級、「言語の機能に障害を残すもの」について、障害手当金の受給に該当するものとしています。

 実際のところ、この基準の言葉だけではどの程度で何級程度か、というのは一見してわからないのではないかと思います。

 失語症用の障害年金の診断書は、ほかに並行機能や聴覚障害等にも用いられるものとなっています。

 失語症に関しては、主に診断書裏面の「会話による意思疎通の程度」の4段階の評価と、「失語症の障害の程度」欄の6項目の「単語、短文、長文それぞれの発話の程度、理解の程度」の4段階評価、場合により標準失語症検査の結果等を踏まえた総合判断となってきます。

5 その他

 障害年金認定基準にもありますが、失語症は脳損傷がかかわる障害です。

 言語野以外の損傷により、例えば手足や精神の疾患等も併存する場合があります。

 こういった場合は、別の障害として評価されますが、障害年金の等級は複数でも「併合認定」等といって、合わせて1つの等級を決めることになります。

 直接的には失語症の認定とかかわるものではありませんが、失語症の障害認定と合わせて行う可能性があるといえますので、合わせてご注意いただくとよいかと思います。

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