働きながら障害年金を受給できる場合

文責:所長 弁護士・社会保険労務士 湯沢和紘

最終更新日:2024年05月16日

1 働きながらでも障害年金を受給できるのか

 障害年金は、日常生活への影響の程度、仕事への影響の程度を踏まえて基準が定められており、一定の基準を満たすと認められれば受給することできます。

 そのため、働くことができているかどうかというのは、障害年金受給の判断に影響があることもあります。

 ただ、前提として、「仕事をしていない人でなければ受給できない」、というルールにはなっていませんので、働きながらでも要件を満たせば受給することはできます。

 どのような場合に受給できるかについて、以下ご説明いたします。

2 原則的な等級の目安

 認定基準の基本的事項という項目において1級には「長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度」、2級には「は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」「労働により収入を得ることができない程度」、3級には「労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度」等と記載されています。

 このことから、1級は寝たきり、2級は家から出られないくらい、3級は限定的な労務ができるくらい、等と言われることもあります。

 ここから進んで、「仕事をしていると障害年金がもらえない」、と端的に考えてしまう方もいるようです。

 上記は認定基準上の大まかな目安ですので間違いというわけではありませんが、必ずしも実際はそうではなく、働きながらでも受給が認められているケースはあります。

3 認定基準が明確な場合

 例えば、「一下肢の3大関節中1関節以上に人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものや両下肢の3大関節中1関節以上にそれぞれ人工骨頭又は人工関節をそう入置換したものは3級と認定する。」基準があります。

 症状の程度によっては上位等級とされる場合もありますが、この基準では、そう入置換の事実をもってまずは3級と認められることになります。

 このように、人工物の置換、四肢の切断等の事実をもって基準とされているものは、基本的に勤務実態等は問題とならずに等級が認められることになります。

 視力の障害等、検査数値で明確な基準が定められている場合についても同様です。

 こういった基準は、すでに置換の事実や検査結果から、一定水準以上の労務、日常生活状況への影響があるものとみなして等級を定めているものと思われます。

 こういった場合は、働きながらであっても障害年金の受給が認められるものと見込まれます。

4 明確な基準となっていない場合

 典型例は精神疾患等ですが、認定基準には「日常生活が著しい制限を受けるもの」「労働が著しい制限を受けるもの」等と記載されています。

 このような、相対的に認定基準があいまいなもの、総合判断を要するものの場合には、日常生活状況、就労状況も含めた原則的な考え方に則ることになり、その結果、働きながらでは受給が認められにくい場合が多くなってきます。

 もっとも、傷病等を抱えて社会生活をおくるにあたり、周囲のご家族、同僚等の目に見えないサポートがあって何とか成り立っている、ということも少なくありません。

 そのため、上記のようなサポートがなければ日常生活状況が維持できない、就労が維持できないと認められる場合には、働きながらであっても、障害年金の受給が認められることもあります。

 こういった事案で適正な認定を受けるためには、障害年金の申請にあたり、勤務実態等の事実を理解してもらえるようにすることが大切になってきます。

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